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情報システムに重大な欠陥を抱えたまま、コスト計算が行なわれている

以前にもとりあげたことのある公認会計士の高田直芳さんの記事に、巷にある情報システムに対する注意喚起というかダメ出しというか、「常識を疑え」というか、そういった内容のことが書かれていました。

セブン-イレブンやサンドラッグなど、コスト削減が重要な流通企業ほどその「本質」を知る由もないという悲劇(ダイヤモンド・オンライン)

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上場企業だからすごい情報システムを導入しているのだろう、と考えている人がいるとしたら、それは誤りだ。世間で名の通った大企業であっても、その情報システムに重大な欠陥を抱えたまま、コスト計算が行なわれているのである。

また、ITが普及して、原価計算などの情報システムを開発し、それを売り込む企業が増えたが、彼らがセールスしているシステムには、重大な欠陥が隠されているのである。

高田さんが欠陥という一つは、コストを1次関数で表そうとする点ですね。

100万本の情報システムがあるとするならば、そのうちの99万9999本は「1次関数=単利計算の公式法変動予算」を採用しており、すべてが「同じ穴の狢システム」なのである。システム開発会社の、美辞麗句を並べたセールス文句に惑わされてはいけない。

要するに、

最小自乗法が崩壊する原因は、企業のコストを、1次関数=単利計算で測定しようとする点にある。これは、今日稼いだキャッシュを明日へ再投資しないことを意味する。金庫に札束を積み上げておくことと同じだ。しかし、実際の企業活動は、そうなっていない。昨日稼いだキャッシュは今日へ再投資され、今日稼いだキャッシュは明日へ再投資されるという「日々複利の連鎖」の中にある。

この辺りの話は、高田さんがいろいろなところでかなり強調されています。もう一つは、売上原価をすべて変動費として扱うことによる不自然さについてです。

〔図表 5〕(引用者注:固定費比率の推移のグラフ)を見ると、4社とも固定費比率が安定推移している点を指摘できる。これは、売上原価のすべてを変動費としているからだ。(中略)情報システムの中には、〔図表 5〕の「安定性」に着目し、勘定科目法を採用して固定費と変動費とを分けているものがある。しかし、これもまた、おかしな話である。(太字は引用者による)

というのも、

その日の朝に商品を仕入れて、その日の閉店までに売り切ることができるのであれば、売上原価のすべてを変動費と仮定する勘定科目法は正しい。(中略)ところが、コンビニやドラッグストアにある商品は、顧客の注文を待ってその日に仕入れるものではない。

売れ残りも覚悟の上で、棚に並べる。(中略)売上原価のすべてを変動費とみなすのは、如何に非現実的な仮定であるかを再考していただきたい。勘定科目法は、企業実務を知らない人々の手による、空想の産物に他ならないのだ。それを傲然とユーザー(企業)に押しつけているのが、現在の情報システムなのである。(太字は引用者による)

コンビニやドラックストアにある商品は、どう考えたって1日や2日で入れ替わるものではありません。そういった意味でも、売上原価をすべて変動費と考えるのは、どこか違和感があります。


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