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オリンパスが連日のストップ安ですね。

オリンパス:損失先送り捜査当局が関心、株価は連日のストップ安

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過去の財テクでの損失処理を先送りしていたのが、この一連の不祥事の発端です。

バブルの頃のツケを今の今まで払わず隠していた点も問題ですが、

そもそも財テクに走らなければ、このような事態は起きませんでした。

もっとも、バブル当時は、どこもかしこも「財テクをして当たり前」という感じだったようですから、

財テクをしないという判断は、よっぽどの信念がないと難しいと思います。

そんな信念をもった数少ないビジネスパーソンの一人が金児昭さんです。

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この本には、こんなことが書かれています。

(以下、引用)

長く考えれば十年ほど続いたバブルの間、

財テクを一円もやらない私のような経理・財務は全社・全グループの方々から非難され、

謗られ(そしられ)、あげくのはてに無能力者扱いされていたんです。
 
世の中全体が、財テクブームに酔っていました。
 
経済評論家、あらゆるメディア、エコノミスト、金融機関、学者などの人たちは
 
「財テクこそ、会社を発展させる。土地・株・ゴルフの会員権・エクイティファイナンス・

株式の新規上場で儲けなければ、経理・財務部門の役割をはたしたことにはならない」

といわんばかりでした。
 
今ではそんなことはまったく忘れてしまったような顔をして、

逆のことをいっていますけどね。


だから、当時は、私も、会社中からどうして儲ける経理・財務にならないのかと、

毎日のように中傷されました。
 
私は、会社では株で儲けようなどと一度も考えませんでした。
 
株も一株も買わなかったし、投資信託にも為替予約にも一円も投資しなかった。


財テクは一円もしませんでした。


そういうものを勧められた内容や件数まで覚えていますが、

ほとんどの証券会社から勧められた17件の飛ばし


(会社が持っている有価証券を、決算期が違う他の会社へ売却すること)


もすべてお断りしました。


販売担当の副社長、専務あたりからも言葉で刺されるような扱いを受けましたし、


経理・財務部門の部下や他の部門の若い人、または工場のベテランの人、


国内外の子会社の多くの人たちからもいろいろなことをいわれました。


ところが、幸せなことに、真上からは言葉や命令がいっさいきませんでした。
 
金児に任せとけば安心だと、考えてくださっていたのでしょう。
 
「何もやらないで平然としているのが一番だと思います」と
 
(当時の)私の上司の経理・財務担当の専務に申し上げたら、理解してくれました。


一番上の会長・社長からは、財テクの話はまったくきませんでしたね。

(引用終わり)

金児さんのような方がいるから、「信越化学工業」は1兆円企業になったのか、

1兆円企業になれるような会社だから、金児さんのような発想ができるのか、

鶏が先か卵が先かはわかりませんが、

いずれにせよ、本業を大切にするということは、

今の時代でもとても重要だと思います。

そして、金児さんのことを書こうとネットを検索していたら、こんな記事を見つけました。


日本人の誇り—オリンパス鈴木 均氏が選ぶ1


1981年にオリンパス入社して、経理部門に20年以上在籍し、

財務会計を担当されていた方が、こんなことを言われています。

記事の一部を引用します。

金児氏は本書で、1円でも利益を出すこと、

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円であっても無駄に使わないことにこだわった経営を説きます。

バブル時代、多くの企業が不動産投資など本業以外の財テクに走りました。

しかし、金児氏は決して手を出さなかった。

為替リスクを回避するために輸出企業の多くが実施する為替予約も、

一切行わなかった。会社に1円でも損失を与える可能性があるからです。

その首尾一貫した姿勢に敬服しました。

「経理・財務は事業部門の僕(しもべ)である」という言葉も印象的ですね。

経理部門は利益を生まないのだから、裏方に徹して現場をサポートすべき。

そんなメッセージに、深くうなづきました。

(引用終わり) 

これを読んで、ものすごく残念な気持ちになるのは、私だけでしょうか。