そのときの対談は、第3回だったのですが、
今回は、第2回の対談からの抜粋です。
池上:第二次世界大戦の日本軍の戦いで、
一番愚かだったといわれるのが、戦力の逐次投入ですね。
ロジスティクス=兵站をまったく考えず、
燃料も食料も武器すらもきっちり補給体制を整えないまま、
前線に兵士を随時送り込んでは、全滅させてしまう。
加藤:ロジスティクスは戦争のマネジメントそのものですが、
日本軍にはそのセンスが決定的に欠けていました。
池上:今回の原子力発電事故の対応を見ていて、
多くの年をとった方が思ったんじゃないでしょうか?
ああ、あの戦争とおんなじことをしている、と。
(中略)
加藤:(略)現場の食事というのは、
その現場での作業をやってもらったことに対するお礼、
という意味があるはず(略)ですから、
常にもまして、饗応という意味が込められなければならないはずだったのです。
なのに、かなりの月日が経った際の報道でも、
いまだにおにぎりやクッキーといった類のものでした。(以下略)
池上:ロジスティクス=兵站に関する常識は、
日本人自身があまり持っていないのかもしれませんね。
今回の東日本大震災では、自衛隊が10万人規模で現地派遣していますが、
テレビ局の若いスタッフに
「10万人が全員、がれきを片付けているわけじゃないんだよ」と言うと驚くんです。
現場で作業するには、後方支援部隊が数倍必要なのは、
災害復旧の現場にしろ戦場にしろ、
エベレストのような高山登山にしろ常識だと思っていたのですが、
残念ながらそうではない。(以下略)
加藤:(日本軍の兵站軽視についての本に関して)補給の軽視、兵站の無視、
輜重兵への差別、経理部門や医療部門への差別、
現地調査の軽視など、読んでいて暗澹たる気持ちになります。
今回の震災直後の対応でも、支援物資を被災地に届けるに際して、
政府や自治体など「公」の機関では、あまりうまくいかなかったようです。
あまり報道されていませんが、道路が復旧するまでは、
大型トラックでは避難所までたどり着けませんし、
なによりガソリンが不足していて、トラックを動かせないという事態があったと聞いています。
表題のビジネス格言は、正確には以下のようになります。
三流は戦術を語る。
二流は戦略を語る。
一流は兵站を語る。
ビジネスパーソンとしては、
『大きなコンペがある』、
『社運を賭けたイベントを任された』、
『新規事業の責任者になった』
こういった場面に遭遇した際には、
兵站、すなわち下準備や行動計画、関係部署との連絡、
適切な予算見積もりや納期までのスケジュール管理等々を
くれぐれも綿密に計算することを忘れずにいたいものです。