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「功あるものに禄を与え、徳あるものに地位を与えよ。」とは?

鉢呂経産相が辞任するようです。

日経電子版の速報はこちら。

まあ、能力的に疑問符が付く人間が、なぜか大臣になっていて、ほどなくして問題が発覚→辞任という流れは、今回に限ったことではないので、あまりここで触れる気はありません。ただ、なぜこういったことが繰り返されるのかについて、参考になるビジネス格言があります。

「功あるものに禄を与え、徳あるものに地位を与えよ。」

意味としては、「功(実績)を出した人間には、禄(金銭・賞品)を与えなさい。そして、徳(品性・見識)がある人間には、地位(役職・権限)を与えなさい」ということです。

実績を出した人間には、それを見逃さず報酬を与えるというのは、ある意味当たり前ですよね。しかし、きちんとできている企業は非常に少ないようです。

品性・見織のないものに地位を与えてしまえば企業はやがて崩壊する

さらにこの格言から一歩進んで、「たとえ功労があるからといっても、(それだけを理由として)その者に地位を与えてはならない」ということも重要でしょう。品性・見織のないものに地位を与えてしまえば企業はやがて崩壊するものです。

今回の鉢呂経産相は、「原発周辺の市街地を『死の町』と表現したり」「原発視察の帰りに、自分が来ている防護服の袖をなすりつけて、『放射能をつけてやろうか』と発言したり」するとされているように、まさに、「徳がない人間に対して、地位を与えてしまった」ケースなのではないでしょうか。

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日本の会社では、実績をあげた人は、「報酬(功)と昇進(地位)はセット」だと思っているので、昇進させないと不満が残り、その後の成果にも悪影響がでてくるものです。

能力主義と成果主義を混同している日本の多くの会社

というのも、会社の人事評価制度が、「禄」と「地位」が連動しているケースがほとんどだからです(「禄」が独立している例としては、営業の歩合給(インセンティブ)がありますね)。だから、結果として、功ある者が地位を得るようになっているのです。

また、多くの会社が、能力主義と成果主義を混同して使っています。本来この2つは明らかに別の概念ですので、きちんと区別する必要があります。

現在、日本の多くの企業が導入している職能資格制度では、成果(功)ではなく、能力(徳)に対してお金を払ってしまっているので、これもまたこの格言に反する制度だと言えます。

地位が上がれば上がるほど、「品性」「見識」「倫理観」「人間性」というのが重要になってきます。例えば、上司が業者にたかっているのを見たら、どんなに成果を挙げる人材であっても、部下は「あの人のようになりたい」とは思わないでしょう。

「部下の失敗には知らん顔でいる」、「部下の手柄を自分の手柄にしてしまう」、「上司への報告は良いことばかりで悪いことは報告しない」などなど。こういった徴候がある人物を責任ある地位につけるとどうなるかは火を見るより明らかです。

追記

サイバーエージェントの藤田晋さんがこんなことを言っています。

人格劣る稼ぎ頭は、出世させるべきか(プレジデントオンライン)

冒頭こんな質問があります。

Q:以下の3タイプの人材を、管理職としてふさわしい順に並べるとどうなるか?

A 人格がよくて、実績のある人

B 人格が悪くて、実績のある人

C 人格がよくて、実績のない人

藤田さんが書かれているので、「何か深い理由と意外な答えがあるのだろうか?」と思いましたが、そうでもありませんでした(とはいえ、当たり前のことを徹底できる企業はなかなかないですね)。要するに、「功あるものに禄を与え、徳あるものに地位を与えよ」ということです。引用します。

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私の答えはA→C→Bである。私は管理職に登用する際の選択基準を、一にも二にも人格に置いている。もちろん、人格が優れていて実績も高ければ文句はないのだが、人格と実績のどちらを優先するかといえば、圧倒的に人格のほうである。

ネットベンチャー企業である弊社は、前例のまったくない世界でビジネスを展開している。前例のない世界では、斬新で優れた事業アイデアを発想できるかどうかが勝負を分けるため、クリエイティビティーに溢れた社員の存在が不可欠だ。弊社のような企業にとって、上にいい顔をするために部下のアイデアを利用したり、保身のために部下の優れたアイデアを潰したりするモラルに欠けた管理職の存在は、最悪なのである。

特に、実績があって人格の悪い人間、つまりBタイプの社員は絶対管理職に上げないようにしている。なまじ自信を持っているだけに、このタイプの扱いが、最も厄介だからである。

(引用終わり)

Bタイプを管理職にしてはいけないのは、ネットベンチャー企業に限りませんね。